けれど、どれだけ涙を流しても、


愛里への嫉妬心は収まらない。





私も教室を出ようとした瞬間、沖本君に会ってしまった。




どうしよう、愛里と散々沖本君について喧嘩をしてしまったから、


何だか顔を合わせにくい…。


なるべくスルーしよう…。




そう思って、私は廊下を素早く歩いて、さっさと帰ろうとしたけれど、


沖本君から、私に話しかけてきた。




沖本君のちょっと長い前髪が、窓から来る風で少し揺れた。




「平井さん、ちょっといいかな」


「な、何…?」




顔を合わせにくい状況と言っても、


好きな人に話しかけられたら、ドキドキしてしまう。


鼓動が、抑えられなくなる……。


顔も、なんだか火照っているし……。


耳なんか、すっごい熱くって…………。



でも、沖本君の一言で、私の体温も心音も、一気に冷めていった。





「愛里見なかった?」