「もしもし?」


《もしもし陽子? 今日うちの家にすごい数のダイレクトメールが届いていたんだけど》


電話に出た瞬間、葵君が帰ってこなかったときと同様の声が聞こえてきた。


「実紗の所にも来たの?」


《え? じゃぁ陽子の家にも?》


そう聞かれ、あたしは今朝玄関先で起きた事を実紗に詳しく話してきかせた。


《あたしも、全く同じだよ》


実紗の声が低く、真剣なものに変わる。


「ねぇ、それってもしかして……」


あたしはそこで言葉を切り、蒼太を見る。


蒼太の目の前だから、次の言葉を続けることができなかった。


《たぶん、彼氏人形を購入したからだと思う》


あたしが言えなかった言葉を、実紗が続けた。


「誰かが個人情報を漏らしたってこと?」


《誰か、じゃないよ。完全に藤井さんだよ》


実紗は悔しそうな声を漏らした。