実紗がその提案をしてきたのは、昼休みのことだった。


教室のテラスに座りお弁当を広げていた時のこと。


「ねぇ、今日の放課後ダブルデートしない?」


不意に、実紗がそんなことを言ってきたのだ。


あたしは驚いて目を見開き、危うくご飯を喉に詰まらせるところだった。


「ダブルデート……?」


「そう! せっかく初めての彼氏ができたんだし、楽しまなきゃ損じゃない?」


「それは……そうかもしれないけれど……」


デートの経験もないあたしが、いきなりダブルデートなんて言われてもピンとこない。


悩んでうつむき、お弁当を凝視する。


そうしていると、実紗が「ダメ?」と、あたしの顔を覗き込んできた。


「ダメじゃないけれど……」


「実はあたしデートとかしたことなくて……だから陽子、一緒に行こうよ、ね?」


観念したように実紗が本音を漏らした。


その言葉にあたしは思わずプッとふき出してしまった。