「それは……ちょっと、まだ用事が残っていて……すぐに出なきゃいけなかったから……」


ジリジリと近づいてくる蒼太。


あたしは後ずさりをして、背中に壁がトンッと当たった。


「用事ってなに?」


蒼太がすぐ目の前に迫っている。


あたしは体中から汗が吹き出し、パニックになりそうになるのをなんとかこらえていた。


「じ……実はね……」


咄嗟の嘘をついていた。


「実はね蒼太。あたしたちを別れさせようとしている人がいるのよ!!」


自分でもびっくりするような内容の嘘。


それにたいし、蒼太は動きを止めて目を見開いた。


「俺たちを別れさせようとしている人?」


「そ……そうなの。だから、それが誰なのか調べていて……遅くなってしまったの」


「そうだったのか」


蒼太はあたしの嘘をそのまま信じたようで、一気に表情が柔らかくなった。