「その人形を売っていた【ドールハウス】については、なにも聞きませんでしたか？」


更に食い下がって聞いてみると、運転手さんは助手席のダッシュボードを開けるように恭子さんに伝えた。


恭子さんは首をかしげつつもダッシュボードを開けて、中に入っていたＡ５サイズのファイルを取り出した。


「実はそういう出来事があってから、僕は個人的にその【ドールハウス】について調べてみたんだよ。それがそのファイルだ」


恭子さんがファイルを開けて中を確認する。


そこには当時のドールハウスの住所や電話番号、藤井さんの名前が書かれている。


「このファイル、いただけませんか！？」


あたしは運転手さんにそう聞いた。


「あぁ、もちろん。


何かそのお店のことで困っていることがあるんだろう？


僕もある程度調べたから個人情報を流したり、格安で若い女の子に人形を売っていることは知っているよ」


「ありがとうございます！」


あたしは運転手さんの好意に涙が浮かぶ。


「でも、どうしてそこまでわかったんですか？」


良子さんがそう訊ねると、運転手さんは少し自慢げにほほ笑み「僕は昔探偵事務所に勤めていたんだよ」と、言ったのだった。