運転手さんは時折目を見開きながら、真剣な表情で恭子さんの話を聞いていた。


「信じてもらえないかもしれないけれど、妹はその【彼氏人形】に殺されたんです」


そう言うと、運転手さんは「いや、信じるよ」と、すんなりと頷いたのだ。


「実は僕の話には後日談があってね。オリジナルの人形を注文したその子は、人形ができたときに当然お店にとりに行くだろう？　その時も僕のタクシーに乗ったんだよ」


「そうだったんですか！？」


あたしは運転手さんの言葉に食いつき、身を乗り出してそう訊ねた。


「あぁ。それでもう１度商店街に行って戻ってきたときには人間そのものと何も変わらない人形を連れていて、驚いたんだよ」


「その人形は片腕がありましたか？」


「いや、それがなかったんだよ。


だから気になって『それは人形なんだろう？　どうして片腕がないんだい？』って、聞いてみたんだ。


そしたら女の子は『これが彼の普通の姿だからよ』って、嬉しそうに返事をしていたんだよ。


あまりにも奇妙な出来事だったから、今でも鮮明に覚えているよ」


運転手さんがタクシーに乗せた女の子は、間違いなく依子さんだ。