そう言うと、藤井さんは実紗の方の箱を開けた。


箱は側面がパッタリと開くようになっていて、その中には目を閉じた日に焼けた青年が立っていた。


「すごぉい!! カッコイイ!!」


実紗が興奮気味にそう言い、目を輝かせる。


「実紗ちゃんがスイッチ入れてみる?」


藤井さんがそう聞くと実紗は「はい!」と、大きな声で頷いた。


人形のスイッチは右足首の後ろ、人間で言う腱の場所についていて、その見た目は家にある電気のスイッチと同じようなものだった。


「これを入れればいいんですか?」


「そうよ、入れてみて」


さすがに実紗も少し緊張するのか、スイッチを押すことをためらいあたしへ視線を投げかけてきた。


あたしはまた曖昧な笑顔を浮かべる。


実紗は人形へと向き直り、そしてスイッチを入れた。


瞬間、目を閉じていた人形が今まさに目覚めたよいうように目を開き、少し首を曲げて周囲を確認した。


その細かな仕草は人間そのもので、あたしは数歩後ずさりをしてしまった。