引き出しの下段は大きくて、そこを調べてみると、そこには辞書や教科書などが一式入れられていた。


この部屋には学生机がないと思っていたけれど、勉強道具は全部ここへ入れられていたみたいだ。


ためしに教科書を1つ手に取り、パラパラとめくってみる。


途中までマーカーで線が引いてあったり、横のスペースに走り書きをしているのがわかる。


しかし、途中からは真っ白で新品同様のページが広がっていた。


あたしは走り書きをしている最後のページに視線を落とした。


これが、依子さんが勉強した最後のページだ。


これ以降のことを、依子さんは勉強したくてもできなかったんだ。


そう思うと、教科書を手に持っていることさえ辛くなり、あたしはすぐに引き出しへと戻してしまった。


そして視線を上げると、パソコンが目に入る。


「恭子さん、このパソコンって……」


「依子の使っていたものよ。中を確認してみる?」


「いいんですか?」