ズレたメガネを直してあたしと実紗を交互に見る。


「はい。隣にあったお店の事なんですけれど」


あたしがそう言うと、彼は少し目を伏せて「あぁ。あの、よくわからない人形を売っていたお店?」と、言った。


「そうです。そのお店、今はどこにあるかわかりませんか?」


「……さぁねぇ……。1か月くらい前に隣に店を始めたけれど、挨拶にも来ていないし、交流もなかったからねぇ」


彼は困ったようにそう言った。


「そうですか……」


「でも、あまり関わらない方がいいかもね」


「どうしてですか?」


「う~ん……ただの勘なんだけどね、あのお店の人は何か黒いものが見える気がするんだ」


「黒いもの……?」


あたしはその言葉に首を傾げる。


「そう。これだけ輝いているガラスを毎日見ているとね、人に色がついているのがわかるんだ。


純粋な人は白や透明。何か悪い事をしている人は黒。君たちは……紫色に見えるけれど、なにか困っていることでもあるの?」