「実紗……やっぱりダメ……帰ろうよ……」


あたしの蚊の鳴くような声なんて今の実紗には届かない。


やがて実紗はフラフラと吸い込まれるようにして店の中へと入って行ってしまった。


「待って、実紗!!」


あたしは慌てて実紗を追いかけ【ドールハウス】へと足を踏み入れたのだった。


入った瞬間、あたしは唖然として店の中を見回した。


真っ白なタイルに真っ白な壁。


広さを感じる店内の真ん中に、3体の男のマネキンが立っていた。


実紗がそのマネキンに近づいていく。


「ねぇ実紗、もう帰ろうよ」


「見て陽子、すごくリアル!」


またも、実紗にあたしの言葉は届かない。


店の壁には白い棚があり、そこには透明の筒状のケースに入れられた人間のパーツが数えきれない量飾られていた。


輪郭、首、胴体、腕、手、足。


それぞれのパーツが整然と並べられているその光景は、鳥肌が立つのに十分だった。