更に追い詰めるように言葉を続けると、藤井さんはめんどうくさそうに近くの椅子に足をくんで座った。


「あのね、リアルな彼氏だって相手を殴ったり傷つけたりするのよ?」


「それは……どうかもしれないけれど……」


でも、あたしたちの相手は人形だ。


意味が全く違ってくるじゃないか。


「恋愛経験のない人にもリアルな経験ができる。それが彼氏人形よ?」


「そんな……! 骨を折られるような経験、リアルでもめったにある事じゃないでしょう?」


「めったにある事じゃないってことはね、時々はあるのよ?」


ああ言えばこう言う。


まるで口のうまい子供のようだ。


「とにかく、あたしも実紗も彼氏人形を返品しますから」


これ以上話をしていても解決にはならない。


そう感じたあたしはそれだけ言うと、藤井さんに背中を向けた。