あたしはそう言い、すぐに実紗の腕を藤井さんに見せた。


藤井さんは目をパチクリさせて「どうしたの?」と、首をかしげる。


「これは、あたしの彼氏人形にやられたんです」


実紗が蒼言う。


あたしは藤井さんの表情をうかがった。


藤井さんは驚いた様子もなく「あら、そうなの」と、言ったのだ。


「こんなことになるなんておかしいですよね? あたしたちの彼氏人形は不良品だったんじゃないですか?」


あたしは、冷静さを装っている藤井さんに詰め寄る。


「不良品なんて人聞きが悪いのね」


「違うんですか? あたしも昨日、帰りが遅いと言って彼氏人形の蒼太に叩かれました」


「それはあなたの帰りが遅かったのが悪いんでしょう?」


呆れたような表情を浮かべる藤井さん。


どこまでもシラを切るつもりかもしれない。


「人を殴ったり傷つけたりするのが彼氏人形なんですか? そんなの買った時に説明されていませんよ?」