「……尚樹ィ‼︎いるーっ⁉︎」

二人の会話は、聞かなかったことにした。これは会話に入っちゃいけない、と感じたから。

『モノにする』

これってさっき、碧都と話してた内容のことだよね。

尚樹も碧都にとっても、大切なモノ。“本気”だとか“恨みっこナシ”だとか、よく分からない。

けど、二人とも真剣だってのは伝わってくる。

そんなに、大切なモノなんだ。

「あ、ん…。今の、聞いてたっ⁉︎」
「えっ?なんの話?よく分かんないんだけど…」

とりあえず、尚樹の問いかけには、すっとぼけることにした。

尚樹は若干慌てたように見えて、その隣にいる碧都は特に変わった様子もなく、窓の方を一点見つめていた。

「あ、そう?聞いてなかった?…なら、いいや」
「もう。わたしの悪口でしょ‼︎」
「まさか。その逆」
「え?」

ぎゃ、く…?逆ってなに。悪口の逆…?なに、全然意味分かんない。

「杏はイイオンナだね、って話してたの」
「なに言ってんの」

“ぷっ‼︎”って吹き出して見せたけど、内心じゃドキドキが止まらなかった。

だって、わたしの話だったんでしょ…?え、それも冗談…?

でも冗談じゃなかったら…?いやいやいや、ありえないっ‼︎

うん、聞かなかったことにしよう。そうしよう。