「どうせ、その子たちにだって手出すんだろ?あー、それとも。もう、食っちまったか?」

尚樹の挑発とも取れる発言。顔は見えないけど、きっと笑ってる。

「……っざけんな」

碧都のクチビルが、かすかに動いた。

…と、思ったらここからが一瞬だった。

《ドンッ‼︎》《バンッ‼︎》《ドサッ‼︎》

効果音にするなら、多分こんな音。

持っていたタコ焼きのパックを、カウンターに“ドンッ”と置くと、近くにいた楓をヒト睨みした。

多分、『あとはやっとけ』って意味だと思う。

そしてその大きな体をクルッと、わたしたちのほうへ振り向き二歩、三歩大股で歩いてくると、尚樹に引っ付いてたわたしをベリッと引き剥がした。

わたしの腕を掴んだまま、また大股で歩き出すと、例のあの部屋に押し込められ、思いきりドアを“バンッ”と閉め、そのままわたしの身体を“ドサッ”とベッドに押し倒した。

言葉にすると、とても長いけど映像で見るときっと一瞬だ。

拉致られた気分。何が何だか分からない状態だ。

だって普通なら、尚樹に何かしそうなものじゃない?

どうして、わたしなのよ…。

「お前も……」
「えっ?」
「…アンコも、尚樹を取るのか」

下から見上げる碧都は、色っぽくて、その目に吸い込まれそうになる。

尚樹を取るのか、って…。碧都と尚樹は、幼なじみでしょ…?

仲良くないの…?ホントは仲が悪いの…?