どうしよう…。手が動かないよっ‼︎前からはスゴイ視線が感じるし…。

「ねぇ、早くしてくんなぁい?」
「碧都ぉ、この人遅いんだけどぉ」

あぁ、どうしよっ。焦れば焦るほど、わかんなくなってきたっ。

「杏ちゃん、ゆっくりでええよ?深呼吸してから、やってみ?」

楓は、わたしの腰にそっと手を回して、トントンとリズム良く叩いた。

そして楓の言うとおり、ゆっくり深呼吸してから、キーボタンを押そうとした時だった。

「こいつ、ばばぁだからなんもできねぇの」

碧都が鼻で笑った。完全、バカにした笑い方。

「ぶっ‼︎ばばぁ、とか笑える‼︎」
「ばばぁ、頑張れー‼︎」

押そうとしたキーボタン。手が震えた。

『ばばぁ、ばばぁ‼︎』

いつしか“ばばぁコール”が始まっていて。涙をこらえるために、きつく下唇を噛んだ。

ギュッと…。感覚がなくなるくらいに、ギューッと。

「碧都‼︎杏、もういい。こっちおいで」

そんなわたしを救ってくれたのは、尚樹で。

碧都を怒鳴りつけると、わたしの腕をグイッと引っ張った。

力が抜けるくらい無気力なわたしは、引き寄せられるかのように、尚樹の胸にスッポリと埋まった。