「杏ちゃん、ちょいこっち来てくれへん?」
「えっ?あ、うん」

眞一郎のところへ戻ろうとしてた時。楓に手招きされた。

楓のところへ行くと、ちょうどお客さんがいてカキ氷のシロップを選んでるようだった。

「杏ちゃん、ちょっとやってみぃひん?」
「え、でも…」
「何があったか知らんけど、そんな顔、杏ちゃんには合わんで」

『そんな顔』って、わたしどんな顔してたんだろう…。

碧都の受け答えが、笑顔じゃなかったから悲しくなった…?

だとしたら、どうしてわたしはそんな顔になるの。

別に碧都が笑顔じゃなくたって、いいじゃない。

誰に笑おうが、わたしの知ったことじゃないし。

「すみません、えっと。カキ氷のイチゴとメロンください‼︎」

そうこう考えてるうちに、お客さんが注文をしてきた。

「杏ちゃん、ほらおいで」
「え、あ、うん…」

グイッと優しく引っ張られ、楓にピッタリとくっ付いた。

「ほら、これ見てみ?イチゴとメロンの金額書いてあるやろ?」
「う、うん」

カウンターにもお客さんが見れるように、金額が書いてあるメニュー表があって。

同じように、こちら側にも小さいけど金額が書いてある。

イチゴとメロンは、それぞれ150円になっていた。