少し心が落ち着いたわたしは、ドアの向こう側へ行く決心をして、ゆっくり開けた。

どうやら、少しピークが過ぎてたようで、中で食事をしてるお客さんはいなかった。

「杏ちゃん‼︎大丈夫っ⁉︎」

いち早くわたしに気付いた眞一郎は、疲れていたのかテーブルに頬をペタリと押し付けていたのに、バッと立ち上がると、わたしに駆け寄ってきた。

「眞一郎、ごめんね。迷惑かけちゃって…」
「ううん‼︎ボクのほうこそ、杏ちゃん放ったらかしにして、ごめんね…。反省してるよ…」

眞一郎は、シュンとして耳も尻尾も垂れてるみたいに見える。

思わず眞一郎の髪に触れ、『よしよし』と撫でた。

「おい、アンコ」

眞一郎の髪を撫でていると、鉄板近くにいた碧都に呼ばれた。

「ごめん、呼ばれたから行ってくるね」

眞一郎の髪は気持ち良いくらい、指通りが良くてずっと撫でていたかったけど。

さすがに無視することができなくて、碧都に近付いた。

「お前、何かあったの」
「えっ?」
「変な客に絡まれたんじゃねぇの」

まさかの碧都の言葉に、言葉が詰まり近くにいた尚樹に視線を送った。

でも尚樹は両手人差し指をクロスして、『言うなよ』と言ってるようだった。