「知りたそうな顔してんね」
「そっ、そんなこと」
「碧都がもしあの時、助けに来たら。…くくっ‼︎」

突然笑い出した、尚樹。もし、あの時助けに来たのが尚樹じゃなくて、碧都だったら…?

「あいつらだけじゃない、イスもテーブルも、グッチャグチャになってたろうね」
「えぇっ⁉︎ま、まさか‼︎」

そんなことあるわけない。あるわけないけど…。

「想像したら、怖い…」
「だろ?気付いたのが俺で良かったな?」
「あ、でも…。どうして、気付いたの…」

自分的には隠せてたつもりだったのに…。

「ん?んー、虫」
「む、し…?」
「あぁ。杏が、大声上げた時。虫が…って言ってたろ。その時、全員杏を見たんだよ。でも、なんか変な感じしたんだよね。今思えば、その水着だったんだな」

尚樹だけが気付いてくれたんだ…。わたしの微妙な変化に…。尚樹だけが…。

「ほんとは…。助けてほしかったの…」
「うん」
「ほんとは‼︎誰か助けて‼︎って言いたかったの‼︎でも…。言えなかったよ…」

もしあの時、『助けて‼︎』って叫んでたら、誰が先に来てくれてたんだろう。

「杏、ごめんね。もっと警戒すべきだった。杏、すげぇイイオンナだからこういうことが起きても、おかしくなかったのに。俺らのミスだったよ」
「な、なに言ってるの⁉︎たまたまだったに、決まってるじゃないっ」

へ、変なこと言わないでよっ。尚樹の顔、見れないじゃないっ。

イイオンナ、とか。そんなこと今まで言われたことなんか、ないのに…。