「杏ちゃ〜ん?なにしてるのー?」
「あー、ごめんね‼︎お散歩行こうか」
「うん‼︎」

碧都の顔が離れない。眞一郎が来て、掴んだ腕を離された。

振り返ることもできなくて、眞一郎の後ろ姿を見ながら、ひたすら歩いた。

「ひゃっ…⁉︎し、眞一郎⁉︎イキナリ腕を絡めないでよっ。心臓止まるかと思った…」

そんな余計なことばっか考えてたわたしに、イキナリ腕に絡みついてきた眞一郎。

普通、それってオンナノコがオトコノコにやることだと思うんだけど…。

「今だけ恋人のフリして?」
「はぁ?どうしてよ」
「だって‼︎チラホラ海にやってきてるでしょ、若者が‼︎」

若者が、ってアンタも若者だよ、眞一郎くん。

「オトコたちが杏ちゃんのこと、見てんだもん‼︎だから、しばらく恋人‼︎」
「は、はぁ?」

眞一郎の言うとおり、周りをグルンと見渡せば確かにチラホラ若者が来てる。

来てるんだけど…。

「気のせいだよ。誰とも目、合わないし」

眞一郎の目には、わたしってどう写っているんだろう。

てか、眞一郎こそ気付いてないの?オンナノコたちの視線。

目がハートになってますよ、みなさん。そして、わたし睨まれてるんですけど…。

オトコたちより、オンナたちのほうが怖いんですけど…。