「そう‼︎ここはレストランじゃないからね?袋に入ったオシボリが出るわけじゃないんだよ」
「ふーん。じゃぁ、どうするの?」
「テーブル布巾を、各テーブルに設置するの‼︎」

そう言うと眞一郎は、棚の中にキレイに畳んである大量の布巾を見せてくれた。

「はい、杏ちゃん。最初のお仕事だよ‼︎これ、各テーブル分、水で濡らして置くんだよぉ」
「うん、分かった」

仕事場に、こんな優しく教えてくれた人が、かつていただろうか。

子供に教えるかのように、優しく優しく教えてくれる眞一郎。

眞一郎に言われた通り、五つのテーブルに五枚の布巾を用意する。

席は全て二席ずつになっていて、多分四人で来たらテーブルを繋げるのだろう。

「水は、こっちだから、ここで絞ってね?あっ、絞る時水はねに気を付けてね?」
「やだぁ、眞一郎‼︎そんな子供じゃないんだからぁ‼︎それに、はねたってどうってことないよ‼︎」
「だぁめ‼︎杏ちゃん、水着着てるんだから‼︎」

水着着てるからダメ?なにがダメ?水はねが…?

わたしの頭の中が“⁇”で、いっぱいになった時、眞一郎が耳元で囁いた。

『濡れてるオンナノヒトって、エロイんだよっ』

は、はいっ⁉︎いや、そんなの初めて聞きましたけど?

そうなんですか?

というか、耳元で囁くのやめてほしい…。気持ちがもたないというか、なんというか…。

いくらワンコロでも、オトコはオトコ。ドキッとしてしまうの。