「言いたいことあんなら言っとけ。今だけだからな、そんなの」
一応教室にいる奴ら全員に。でも、そいつらを主に目的として言った。
…これでポンポン出てきたらそれこそ牽制しかねーんだけど。
「では一つ…」
その言葉にホッとする。
「ここの他にも空いてる席はあったと思うんですが」
「そーだな」
大体予想してた質問内容と同じだった。
要は『わざわざここにしなくてもよかっただろーが』って言いたいんだな。
でもなぁ少年よ。
他の空いてる席っつったら確実に女に挟まれて身動きとれねぇ場所だけだ。
しかも横には女どものボス。
その中に、あんなよくわかんねー得体の知れない十六夜を放り投げることは、できなかったんだよな。
「お前も悟れ…」
「は?」
「先生。そろそろ一時限目開始の時間だと思うのですが」
田中くんの成績アップしとくぜ!
「一時限目は…」
「数学です」
「そーだった!じゃあ俺からは以上な。今日も青春しろよ、じゃーな!」
「ちょっ、先生!?」
いつも通りに締めて、さっさと暑苦しい教室から出る。
動揺して俺を呼ぶ奴らを無視して逃げる。
追ってくることはないだろうからスピードを緩める。
一応教師だから、廊下を走ることだけは避けたいものだ。
目的地は理事長室。十六夜の向かったその場所だ。