「……………」
気付けば、じーっと十六夜に視線を向けられていた。
今度は目を逸らされなかった。
「何か用か」
無駄だと分かりつつも声をかけると、意外にも口を開いた。
「教師って大変なんだな、と」
「は?」
「…理事長に呼ばれているので、そろそろ大丈夫でしょうか」
「あぁ」
俺を警戒しているのか、質問の間も与えてはもらえなかった。
ただ踏み込まれることが嫌い、ってことも有り得はするが。だとしたらむしろあいつらとは気が合うんじゃないか?
「先生」
十六夜の足音が消えてすぐ、切れ気味な声が飛んできた。
「んなキレんなよ…」
「別にキレてなんかいないですよ」
そう言いながらも眉間に皺が寄っている。
いやぁ、某芸人を思い出してしまった…
俺はこんな状態の餓鬼共になんて声をかけてやるべきなんだろうか。
いい加減大人になれ、とか。
一歩踏み出してみろよ、とか。
ありきたりの言葉をかけることが、俺の役目なんだろうか。