こんなんでも今までなんとかやれてきてる。
「よろしく」
隣に座る男に挨拶をして、俺が指した席に座った。
…うわ、周りあいつらだ。
あの集団の中で一番黒い奴が明らかに俺のことを睨んでいて。というか、殺しそうな目で微笑んでいて。
きっとそれは俺の幻覚じゃないだろうから、笑顔で返す。
ここらでいっちょ牽制するか。
「鳴海ー」
笑顔が張り付いて剥がれなさそうなそいつの名前を呼ぶ。
「なんですか」
「お前らがこんな早くから来るのは珍しいことなんじゃねーの?」
「先生がそんなことを言って大丈夫なんですか…」
なんとなく鳴海に心配されている気がする。
まぁいい。
ここで俺がすべきと判断したことは、俺の権力をちらつかせることじゃなくて。
「仲良くな、転校生と。まさかお前らのことだから無視なんて餓鬼みてーなこと、しねーよなぁ?」
無理やり仲良くさせることだ。
俺の意図を理解した鳴海が、ギリッと歯ぎしりしたのがわかった。
──いじめたいわけではないんだが。
さすがの俺でも、あいつらの気持ちが微塵も感じられないほど、冷たい奴ではないつもりだ。
今、譲るつもりは全くないが。