「また起きたみたいだね……失踪の事件が

さ。

マキちゃんから、その話を今日俺も聞い

たんだ。

電気屋さんの息子が、元気よく走り回っ

てたのを、最近見たとこなのにな……」



「マキちゃんかぁ。最近見ていないけど

お寺の娘さんね。

きっと今ごろ住職さんも探してくれてい

るわね」



「なんだろうな、いったい。誰も失踪後

は、今まで一人も見つかっていないみた

いだしさ……

どこに行っちゃうんだろ……」



「あんたも気を付けなさいよ。誘拐事件

かもしれないんだから」



「誘拐かぁ……」



俺はそのまま二階へと繋がる階段を上が

り、自分の部屋に戻ると家着に着替えて

いた。



その時も母親から聞いた、誘拐という言

葉に少し身震いがしていたんだ。