確かに塩酸なら今頃大変なことになっているだろう。
静まった教室に、やっと教師が「席に戻りなさい」と言い始めた。俺はそれを聞かずに廊下に出た。
坂井さんがキョロキョロしているのを見つけて、近付く。
「行く場所見当ついてるから、保健室先行っててくれる? 手怪我してたから」
それだけ言うと、坂井さんは頷いて保健室へ向かってくれた。
彼女が行く場所はひとつ。
放送室だ。
一年生が使っていた非常階段を上って、放送室まで行った。一応ノックをしたけれど応答なし。ドアノブを回してみると開いたけれど、中には誰も居ない。
…まさか、ハズレ?
嘘だろ、と扉に寄りかかる。