彼女の手を引いて、保健室に行く。

黙ったまま入ると、坂井さんが振り向いた。

「先生、今日出張でいないから開けて貰ったんだ」

そう言って、テキパキと包帯やらを取り出す。何でも保険委員らしい。

彼女はぼんやりと視線を漂わせて、治療されていた。綺麗に巻かれた包帯を見て、「どうもありがとう」と言った。

「こちらこそ、どうもありがとう」

坂井さんが深々と頭を下げた。

彼女が化学室を出てから、塩酸をかけられたと思っていた女子が騒いでいたけれど、キッパリと坂井さんが

「それ、純水だよ」

と言い放って化学室を出た。