忘れてしまうなら、刻めば良い。どんな愚か者だってそうしたら忘れないだろう。

「…くだらないことばっかして、それを関係ないって顔してる人間も同罪なのに」

持っていた試験管がピシリと音を立てた。

周りを睨みつける。クラスメートの視線が集まっていた。

見てみぬフリをするこいつ等も同等のレベルだ。

ヒーローがいるなんて思ってない。
だからって、悪役が正当化される世界になってしまうの?

バキッと試験管が折れた。手のひらにガラスが刺さっている。

「ごめんね」

振り向いて、驚いた顔をして固まっている坂井さんに謝った。

あたしだってそれを知りながら、放送室に閉じこもっていた。

試験管を流しに捨てて、化学室を出た。
先生に止められることなく、廊下を歩いた。