化学の担当の先生が入ってきて、早速実験の説明をし始めた。あたしはそれを流しながら、前に「いっしょうびんさんえん」というゴロを誰かが言っていたのを思い出した。
一体何のゴロだったんだろう。
教科書をペラペラ捲っていると、周りが急に立ち上がったり話し始めたりしたので何事かと隣を見た。
「塩酸を稀釈するから、まえから塩酸と試験管持ってくるね」
坂井さんは丁寧にそう言ったので、あたしもお供することにした。やることはしっかり頭に残っているけれど、ほら、二度言われたって怒らない。
カシャ、とどこかでカメラのシャッター音がした。躊躇いなく振り向くと、女子の群があの笑い方をしている。
「めっちゃウケる!」
「タイトルつけちゃおうよ」
「ぶりっこ坂井と、ヒッキー瀧本ってどう?」
キャハキャハ笑う声。