記憶は、全て音と共にある。
「同じこと、あたしに二回も言わないで」
小学生低学年にしては、仲の良い友達に言うには、キツい口調だったことは今でも後悔している。
親にも先生でも友人でも、同じことを二回言われるのは嫌だった。
あたしの耳と頭は一回聞けばその言葉の意味が分かっても分からなくても全部覚えている。声も言葉も。
検査を重ねて、医者にそれを告げられた時、親も祖母も複雑な顔をしていた。それから、あたしにかける言葉が極端に少なくなった。
どう扱えば良いのか分からないだろう。あたしにさえ、それは分からない。
中学に入って、分かり易いくらい自分から殻に籠もっていった。