当たり前のように、彼女は放送室から出なかった。

一年生は非常階段から教室へ戻るらしく、「来てくださってありがとうございます」と丁寧にお辞儀をして行ってしまった。

教室に戻ると、坂井さんの姿があった。ぽつんとひとり。それを少し見て、木暮に声をかけられる。

「どこ行ってた?」

「まあ、ちょっと」

「そういやさ、放送部って瀧本も入ってるらしい」

「瀧本…?」

そこで担任が教室に入ってきた。女子体育担当の、あ、瀧本ってあの。

「今日化学あるわよねえ、瀧本さん来ると良いんだけど」

今日の化学は、実験だ。