その日から、渡邊先輩が当番の日はいつも図書室へ足を運んでいる。
今だって本で顔を隠しながらガン見してる。端から見ると、本を読んでる感じでしょ?
その時、複数のバタバタという足音が先輩に近付いていった。
「渡邊せんぱぁ~い」
「本ばっかり読んでないで私達とお話ししましょうよ!」
「今日もかっこいいですねぇ」
この甘ったるい声…本当苦手。
あの子達は毎日先輩を誘いにきてる。
文の後ろにハートマークが見えるのは私だけじゃないはず。
成功したことないけどね。
「ごめんね。本が読みたいんだ。あと、少し注意。図書室の中では走らないこと、それとできるだけ小さな声で話してね」
よし、これで...。
「きゃーーーー!」
えっ。
「やばいやばいっ!今日も渡邊先輩に怒られたっ!」
「怒る姿もかっこいいですねぇ…」
…だめだこりゃ。
先輩の顔を見てみると、案の定、ひきつっていた。
「じゃあ先輩の邪魔をしたくないので失礼します!」
「失礼します!」
そうして、笑顔で去っていった。