「今はお前がいるから、
なんか大丈夫な気がする。」
「大丈夫って、なんですか。それ。」
部長の言葉に思わず笑ってしまった。
嬉しいような恥ずかしいような…
なんか、よくわかんない。
「…ここでずっと突っ立ってるのも
迷惑かけちゃうだろうし、
とりあえず、紗耶香さんお墓のところまで行きましょう?」
そう言って部長の手をつかみ、
微笑んで見せた。
嬉しいやら悲しいやら、で
もう自分でも今自分がどんな感情なのかわからない。
きっと今、私は部長より、
混乱してる。
それでも、部長を紗耶香さんに再会させなきゃって、そう思った。
「…涼穂、ありがとう。」
「な、なんですか急に。
名前で呼ぶなんてずるいです!」
私がそう言うと、部長は
嬉しそうに笑った。
“松田家”と、彫られた綺麗なお墓。
まだ新しそうな花とお線香が供えられていた。
…なんか、緊張する。
この場に紗耶香さんが、いるわけじゃないのに。
でも…。
私はつかんだままだった部長の手を
ぎゅっと、にぎり紗耶香さんのお墓と
向き合った。