…もう、やばいのは私の方ですよ。
そんなこと言っちゃうんだもんなー、
部長。なんの前触れもなく、
急にそんなこと言うから…
心臓がもたない。


「…部長のばか。」

「上司をばか呼ばわりか。
いい度胸だな。」


部長はそう言って、赤くなった顔をまた
右手で覆った。


本当、かっこいいのに、時々そんな
可愛いことして。


「…部長のばか。」

「はいはい、バカだよ俺は。」


「ばか。…好き。」


「お前、何回バカって言うんだ…って、


え?」


三回目のばかのあとに、
聞こえるか聞こえないかと言う声で、
小さく呟いた。



…なに、やってんだろ私。
うわー!恥ずかしいことしちゃった!


「あ、あの、忘れてください!
早く行きましょう!ね!?」



言うつもりなんてなかった、「好き」が
部長に聞こえたことが恥ずかしくなり、
私は部長にそう言って、急かした。



…あれ?部長、どうしたんだろう?


急かす私に、さっきから終始無言のまま
ぴたりと固まって動かない部長。
ハンドルに頭をのせて、ため息をついている。



…これは、もしかしなくとも、
私またなにかやっちゃった感じ…




「…好きだ。」


「え?」


ハンドルに頭をのせ、うつむいたままの
部長が、ぼそっと呟いた。