「足下、気を付けろ」

「はーい」


部長に手を引かれ、上機嫌で部長の車に
乗り込む私。

「お邪魔します…」

「どうぞ。」


助手席に座り、そわそわと落ち着かない様子の私を見て部長は、大きく口をあけて笑ってる。


もう!そんなに笑わなくったって
いいのに。

だって、初めて乗ったんだよ?
部長の車。そんなの落ち着かないにきまってる。
全部が部長のにおいに包まれてて、
なんか、幸せ…

あれ、なんか今変態っぽかった?


「…なんか、俺まで緊張してきた。」

「え?」


部長も運転席に乗り込み、シートベルトをしめ、ハンドルをにぎる。
そのさだか、部長はふと、そう言った。


部長も緊張してる?
うそ、だってすごく余裕っぽいもん。


私が不機嫌そうにそう言うと、部長は
少し微笑んだ。

「俺だって緊張くらいする。
好きな女を隣に乗せてるんだ。当たり前だろ?


それに、その…」


「その…?」


そこまで、言いかけて部長は
頬を赤らめ、口元を右手で覆う。


「…思ったよりも距離が近くて、
今、ちょっとやばい。
…緊張して七瀬の顔がよく見れない。」

「え…っ」