…なにやってんだろ、私。
部長に迷惑かけて…
紗耶香さんならきっと、こんなことないのに。
きっと、あの写真に写る、優しい笑顔で
部長をしっかり支えるはず。


ねぇ、部長。

「…部長は本当に私が彼女でよかったと
思いますか?」

「七瀬?なにか言ったか?」



部長の胸に顔をうずめて発したその
言葉は聞き取れないくらいに小さくて、
部長の耳に入る前に、かきけされた。


「いえ、なんでもありません。

あ!そんなことより、
早く行きましょう!」


「…ああ、そうだな。」


無理にだした私の明るい声に、
部長は少し考える素振りを見せたあと、
私の手をとって引っ張った。

…あったかい。
大きい部長の手。ごつごつしてるのに、
指はすらりと長くて、私の大好きな手。
全てを包み込んでくれるような気がする。


全部全部、気にならなくなる。



ふいに部長の顔が見たくなって、
繋がれた手に向けていた視線を、
部長の顔に向けた。


「…これくらい、いいだろ?」


部長は照れたようにそう言って、
握ったままの私の手をまた、しっかりと握った。


ふふ、可愛い!


私は部長に気づかれないように、
小さく微笑んだ。