「すみません、ついそのまま読んじゃった。あっ私、弥月はるです。」

丁寧なあいさつ、それに俺とは違うさわやかな笑顔。君を知らない奴はいないだろう。過去の俺以外の話だけど・・。

「もしかして、結構前から居ました?」

その上目使いで、男が堕ちているんだな・・。

だめだ、気を確かに。

「さっきの歌って、自分で作ったの?」

「やっぱり聞こえていたのか。そうだけど、この歌はあまり好きじゃないんだよね。」

拾ってくれた携帯を渡してくれた彼女の表情は、夕暮れの甘酸っぱいオレンジ色のせいか、切なく見えた。

「俺個人的には、好きだけどね。」

ふと声に出してしまった。自分でも気付かずに・・。

恐る恐る顔を上げると、

「君は変わった人だね。」

「ん?」

「だって、感想を言ってくれた人は初めてだから。」

そう言われてみると、初対面の人に何言ってんだ俺。

「うれしかった、ありがとう。」

そう言って、自慢げに笑顔を見せた。