自己嫌悪に陥っていると、桐谷先輩がすっと近づいてきた。

ひ、何だ?
心臓の音が耳元から聞こえる。

先輩は俺の右側に立った。

「吉永先輩に誉めてもらったみたいね」

やっぱり名字で呼ぶのか。

「茉莉花」に慣れたせいで、少し違和感。

「ちょっと聞かせて」

「は、はい」

先輩の瞳に押されるように、俺は楽器を構えた。