茉莉花先輩は、俺に向かって言った。

「ツェーデーエーエフゲーアーハーツェーってやつ。けど、藍ちゃんが教えてないなら、まだいいわ」

「……はあ」

思わず間抜けな声が出てしまった。

違う世界に来たんだなあ、という不思議な感慨があった。

「じゃあ藍ちゃん、啓介くんが大丈夫そうになったら、言ってね。楽譜渡すから」

茉莉花先輩は、ひらひら手を振って戻っていった。

桐谷先輩は淡々と言った。

「練習続けるよ」