その日は、初めてきちんとクラリネットを構えて吹いた。

吹いたといっても、出せる音は三音くらいしかなかったが。

最初に出せたのは、どこも穴をふさがない音だった。

「これはソ。実音はファ」

「じつおん……」

「本当に出てる音。クラは移調楽器だから」

「……?」

「そのうち、わかるようになる」

説明は理解できなかったが、やっぱり音が出せるのは楽しかった。