水曜日の放課後、俺はいそいそと音楽室に向かった。

教科書のおかげで、楽譜の見方はわかった。

シャープとかフラットとかはよくわからないが、これから覚えればいいだろう。

音楽室に入ると、もう桐谷先輩は来ていた。

「先輩!」

「何」

「音楽の教科書の見開きに載ってた人て、先輩のお母さんですか」

桐谷先輩は、無表情のまま答えた。

「ああ、桐谷蘭? 母よ」

「やっぱり! すごいですね」

「別に?」