手首をぎゅっとつかまれた。

 「咲じゃん!ごめん、前見てなくて・・・」

 わざわざをつかむ必要があったのか、なんて思いながらつかまれている手首をじっと見つめた。

 なんとなく、

 目を合わせてはいけないような気がして。

 「なんで俺のほう見てくんないの?」

 気に食わなかったのか、ぐいっと引き寄せられた。

 私は背が低いから、

 彼の胸あたりに耳がきて、

 彼の心臓の音を間近で聴いた。

 「ちょっとさ、授業さぼろーよ」

 にっと笑った彼に無理やり引きつられ、屋上へ向かった。