「昨日河川敷でリフティングの練習してたらさ、小学生の子の野球ボールが川に落ちて。それを拾ってやろうと思って川に入ろうとしたら滑ってさ!足首ひねった挙句、川底で膝とか打っちまって。大会近いのにやっちゃった~って感じだよ!」


 なんて笑いながら話していた。


 「ばかだな~」
 「どうせ浅い川だったんだろ!」
 「まあ、お前らしいよな」


 みんなはそう言ってからかった。


 私の目に映る「アイツ」は、笑いながらも瞳の奥は悲しげだった。


 なぜそう思うかというと、

 「アイツ」こと、芦田 竜弥(アシダ リュウヤ)と私は幼馴染で

 ずっと「一緒」だったから

 「アイツ」の考えていることなんてお見通し。


 群れが去ると、私は後ろを向いて話しかけた。


 「無理してない?」


 じっと瞳の奥を見つめた。


 「大会近いんでしょ?」


 もっともっと奥を見つめた。


 すると

 「大丈夫!俺はベンチでみんなのサポートができるから!」


 と、笑顔で返された。


 竜弥はサッカー部。


 あまりサッカーには詳しくないけれど、周りが「上手い」とおだてているからきっと「必要」な「選手」なんだろう。

 その竜弥が次の大会で欠ける。


 チームメイトも、竜弥自身も

 不安を抱える毎日になっていった。