「遥輝…。」



ずっと下を向いていた由依ちゃんが口を開いた。



「…分かった…。もう、戻れないんだね…」




「うん。ごめん。」



涙を目にいっぱい浮かべたまま、屋上の扉へと駆け出して行く由依ちゃんを見て…



「待って!!!!」



自分でもよくわからないけど、気がついたら由依ちゃんを呼び止めていた。



「可奈子?」



「…なに?慰めの一言でも言うつもり?」



「え、えっと…あの!遥輝のこと私大好きで、絶対誰にも負けない自信ある!
でも由依ちゃんも遥輝の事好きなら、私いつでも勝負受けるから!
正々堂々と戦うから、いつでも来て。」




「…もう行かないよ。いつまでも脈なしの男追うなんて時間の無駄でしょ。」



「そんなっ…」





「遥輝の彼女がもっと嫌な奴だったら、邪魔しに行ったかもね。」



「え?それって…」




私のこと、認めてくれたってことかな?



だとしたら、嬉しい…。


由依ちゃんは、振り返らないまま、



「遥輝、いっぱい傷つけて、ごめんね。」



って小さい声で言って、屋上を出て行った。