「…」

「…私、ロック歌手になりたかったんです」

智子は、食器洗いを再開しながら、苦笑いを浮かべて話し始める。

「ロック歌手?」

「はい。学校卒業したあと小さな会社でウェディングプランナーやってたんですけど、カラオケで歌うだけじゃ我慢出来なくなって、ロック歌手になりたいって思って、そのウェディングプランナーで貯めた貯金叩いて都会に出て、本格的にボイトレに通ったり、オーディション受けたりしたりしてたんです」