「どうした?」 手元を見つめて動かない智子に佐藤が声を掛ける。 「…」 「…誉めたつもりだけど。ひょっとしてなんか気に障った?」 「…いえ」 「…」 「…歌なんて、もう歌わないって思ってたのに、なんか、つい歌っちゃったし…。…優しい歌声なんて言われたの初めてで信じ難いんだけど…」 「…」 「佐藤さんは、嘘つかない人だし…」 智子はゆっくり顔を上げて佐藤を見る。