「…あ…?」

ぼんやりと口から吐息を漏らし、ゆっくりと瞼を開ける。

茶色の瞳が露になり、そっと俺らを見た。


「…あ、かねさま…ゆおう…」


「スズっ」
“スズぅ!”

たまらず抱き締めた。

アカネのかわりか、俺個人の安堵感か。


ちっちゃな体躯を腕の中に納めた。


「よかった…!い、痛いとこは?」

“スズぅ…
おまっ、血だらけじゃねーか!何があったんだ?”


「…同時に話さないでください…
大丈夫です、アカネさまの霊力のおかげで、だいぶ…」


「あ、ああ…そっか…」


俺の体からものすごい勢いで霊力が流れていったもんな。


「縄…」

「…私の剣で切ってみては…」

「あ、そっか。黒庵さんの分身のやつがあったね」


“掴むように糸を引っ張れば、用途にあったやつがでてくるぞ”


言われたとおりに掴むように引っ張ってみた。


指に伝わる糸の感触が変わり――


「わわっ」


真っ黒のハサミが出てきた。


少し豪奢な飾りがついた、よく切れそうなハサミ。


「…本当に刃ならなんでも良いんだね……」

“ハサミも出んのな…初めてみたわ”


そりゃあ英雄神の力を使ったハサミをわざわざ使おうなんて思わないもんな。