「川口だって涙もろいじゃん」

目元に触れる暖かい感触は、谷原くんの指なのかな。
もっと触りたい。触って欲しい。

私の頬に添えられた指にゆっくり触る。
ああ、これが、谷原くんの指で。

思わず口元が緩んで、鼻から音がもれる。

「ふふふ」

笑った拍子に視界を妨げていた水分が流れ落ちて、谷原くんの顔が鮮明になる。

「谷原くん、顔、赤いよ」

触っている指がビクッと震えたのがわかる。
かわいい。

「好きです。付き合ってください。」

触れていた手の、掌を重ねてぎゅっと握る。

谷原くんへの全てを込めたわたしの言葉。

胸の苦しさは変わらない。
息がつまるのも変わらない。

けれど、私の言葉を谷原くんが受け止めてくれる。

それだけで、この苦しさもなんかいいなって大事にしたいなって、そう思えた。


「ありがとう、谷原くん」