図書委員になったのは偶然だった。
前期の委員決めのときに、誰も立候補しないことにしびれを切らした学級委員が、ならばじゃんけんで、といいだした。
クラス3分の2が参加するじゃんけんで、まさか最後の四人に残るくらい自分の運が悪いとは思ってもいなかった。
図書委員と文化祭実行委員。
クラスでも真面目で大人しい子、という風に思われているだけのわたしが文化祭実行委員なんて務まらないよ、という自嘲気味の悲願が天に伝わったのか、最後のじゃんけんで私は図書委員になった。
学年で人気が高い谷原くんと。
谷原くんは、特に顔が整っているとかそういう部類ではない。
少し印象的な顔立ちはしているものの、顔だけでかっこいいかと聞かれればうーんと頭をひねる人が多いようなそんな感じで、じゃあなんでそんなに女子にも男子にも人気があるのかといえば、温和で誰にでも優しい性格からだった。
誰にでも優しいというと少し語弊があるかもしれない。
普通の男の子と同じく、女の子をからかったり、友達と小突きあったり、冗談を言ったり、はする。
下町にいそうな、おばあちゃんたちにモテモテの好青年風、というのが一番しっくりくる。
誰かが困っているときに、躊躇わずに手を差し伸べることができる、そんな男の子だ。