兄たちの会話を聞いた日から数日経ったある日。

友達と2人で楽しく会話をしながらの下校途中、少し離れた後方から男の人たちの会話が聞こえてきた……

「前の子…スッゲー綺麗なロングヘアーだな」とか

「後姿マジ、キレイー」とか

「おい。誰か前に回って顔見て来いよ……」

まるで私たちに聞かせるため?

そう勘繰りたくなるほどの大きな声で会話をしている。

数日前。

兄たちの会話を聞いていなければ『誰だよ?』と思い切り振り返っていたはずだから……

どうせこの人たちも勝手に私の顔を想像して顔を見た後は『99%の確率で見なきゃ良かった…』って後悔するんでしょ?

そう思ったら無性に悲しい気分になって……

意地でも『顔を見せてやるものか!』そう決意した私。

「ごめん。……ちょっと用事思い出したから先帰るね」

不自然なほど正面を向いた私はカバンで顔をガードするようにして小走りのような急ぎ足で歩き出していた。

私の通う高校は大きな通り沿いにあって交差点まで真っ直ぐな道が1km以上続いている。

交差点の手前でさすがにもう後ろの人たちを振り切ったと思い、疲れて息の上がった私は立ち止まりハァハァと荒い息を整えていた。