ひまわり堂に通いはじめて半年。雅巳さんはマッサージだけでなく、正しい姿勢や歩き方なんかも教えてくれた。言われた通りに姿勢を意識するようになったら頭痛が減った気がする。
そして会社でも「なんか最近良いね」と言われるようになった。嬉しい効果だ。
「こんにちはー」
店に入るのも慣れたもので、先にお客さんがいるときには別室で雅巳さんの本を物色したりもするようになった。
今日は何を読もうかと本棚を眺めていると、ふいにガタッと大きな音がした。
何事かと覗くと、そこには綺麗な女性と抱き合う雅巳さんの姿…。そして女性は私に気がついて、ニッと勝ち誇った様に笑った気がした。
(え…、何、今の…?)
私はなんだかわけがわからなくてそっと部屋に戻る。
何だったんだろう、今のは。胸の奥がモヤモヤする…。
彼女なのかな?何で私にあんな顔したんだろう。まるで見せ付けるみたいに…。
しばらくしてドアがノックされた。
「由香ちゃん、お待たせ。」
「は、はいっ!」
声がうわずってしまう。
何だか雅巳さんの顔を見辛い。
でも雅巳さんは私が見ていた事は気付いていないみたいだった。
いつも通りに案内されてマッサージが始まる。
さっきの女の人の顔が目に焼き付いていて、雅巳さんとの会話もどこか上の空になってしまい、せっかくマッサージで癒してもらうはずだったのに台無しにされてしまった気分だ。
「はぁ~……」
店を出てしばらく歩いた後、溜めていた息を大きく吐き出す。
出会ってから半年たつけど、自分はただのお客でしかないことを改めて思い知らされる。
色んな話をしたけれど自分が見ていた雅巳さんはほんの一部分。
まだまだ自分の知らない雅巳さんの顔がきっとある。
もっと雅巳さんが知りたい。
もっと雅巳さんと仲良くなりたい。
出来れば雅巳さんに、自分をもっと見てもらいたい…。
そんな欲が出てきてしまった自分に驚く。
久しく御無沙汰だった感情を、一言で言うのなら、
それは恋。
「そっか…私、雅巳さんの事好きになってたんだ。」
気にならなかったわけじゃない。
優しい笑顔もお日様みたいな匂いも、温かい手も、ちょっと低い落ち着いた話し方も、雅巳さんと過ごす時間があまりにも居心地が良すぎて、その関係を壊したくなくて考えようとしなかったんだ。
お客という立場を選んだのは自分。
だから、雅巳さんが女の人と抱き合っていたって私には何も言う権利がない。
でもこの先は?私は今まで通りにいられるんだろうか。
この先雅巳さんに彼女が出来てもお客として笑っていられるんだろうか……。
考えただけで胸が痛かった。
ふいにぽろりと涙がこぼれた。
「雅巳さん…」
そして会社でも「なんか最近良いね」と言われるようになった。嬉しい効果だ。
「こんにちはー」
店に入るのも慣れたもので、先にお客さんがいるときには別室で雅巳さんの本を物色したりもするようになった。
今日は何を読もうかと本棚を眺めていると、ふいにガタッと大きな音がした。
何事かと覗くと、そこには綺麗な女性と抱き合う雅巳さんの姿…。そして女性は私に気がついて、ニッと勝ち誇った様に笑った気がした。
(え…、何、今の…?)
私はなんだかわけがわからなくてそっと部屋に戻る。
何だったんだろう、今のは。胸の奥がモヤモヤする…。
彼女なのかな?何で私にあんな顔したんだろう。まるで見せ付けるみたいに…。
しばらくしてドアがノックされた。
「由香ちゃん、お待たせ。」
「は、はいっ!」
声がうわずってしまう。
何だか雅巳さんの顔を見辛い。
でも雅巳さんは私が見ていた事は気付いていないみたいだった。
いつも通りに案内されてマッサージが始まる。
さっきの女の人の顔が目に焼き付いていて、雅巳さんとの会話もどこか上の空になってしまい、せっかくマッサージで癒してもらうはずだったのに台無しにされてしまった気分だ。
「はぁ~……」
店を出てしばらく歩いた後、溜めていた息を大きく吐き出す。
出会ってから半年たつけど、自分はただのお客でしかないことを改めて思い知らされる。
色んな話をしたけれど自分が見ていた雅巳さんはほんの一部分。
まだまだ自分の知らない雅巳さんの顔がきっとある。
もっと雅巳さんが知りたい。
もっと雅巳さんと仲良くなりたい。
出来れば雅巳さんに、自分をもっと見てもらいたい…。
そんな欲が出てきてしまった自分に驚く。
久しく御無沙汰だった感情を、一言で言うのなら、
それは恋。
「そっか…私、雅巳さんの事好きになってたんだ。」
気にならなかったわけじゃない。
優しい笑顔もお日様みたいな匂いも、温かい手も、ちょっと低い落ち着いた話し方も、雅巳さんと過ごす時間があまりにも居心地が良すぎて、その関係を壊したくなくて考えようとしなかったんだ。
お客という立場を選んだのは自分。
だから、雅巳さんが女の人と抱き合っていたって私には何も言う権利がない。
でもこの先は?私は今まで通りにいられるんだろうか。
この先雅巳さんに彼女が出来てもお客として笑っていられるんだろうか……。
考えただけで胸が痛かった。
ふいにぽろりと涙がこぼれた。
「雅巳さん…」